2021年第3回定例会における2020年度決算の特別委員会でまちづくり分科会(9月21日、24日)及び総括質疑(10月4日)で質問を行いました。(その1)
まちづくり分科会での主な質問項目
〇 小杉駅周辺地区再開発等事業費
鷺沼駅前地区再開発等事業費
〇 地域交通支援事業費
(コミュニティ交通について)
〇 川崎縦貫高速道路計画事業費
〇 公園緑地施設費
総括質疑での主な質問項目
〇 2020年度決算の特徴について
○ PCR検査の拡大について
○ 臨海部の脱炭素戦略についてなど
テーマ1 小杉駅周辺及び鷺沼駅前地区再開発について
小杉町3丁目再開発ビル38階建てのビルに「総合自治会 館・子ども文化センターが入っている。
(1)再開発事業には144億円の補助金が投入されている
昨年12月に事業が完了した「小杉町3丁目東地区市街地再開発事業」への補助金と公的施設(総合自治会館)の床の買い取り価格など公的資金=税金がいくら投入されたのかを質しました。
「総事業費は約434億円でございまして、そのうち市の補助金は、約34億円で国、県と合わせた補助金総額は、約144億円で、総事業費に占める割合は、約33%です」
このように、実にと総事業費の3割が補助金で賄われていることがわかりました。また、再開発で建設されたタワーマンションと一体で整備された「総合自治会館」の整備費が、内装工事費を除き、18億8,464万円(1㎡当たり125万6千円)であることから、さらに多くの税金が投入されていることがわかりました。
再開発事業名 |
総事業費 |
国・県・市の補助金額総額(市の補助金) |
補助割合 |
武蔵小杉駅南口西街区 |
322億4400万円 |
118億6500万円(38億300万円) |
36% |
武蔵小杉駅南口東街区 |
267億 100万円 |
90億8800万円(39億2600万円) |
34% |
小杉3丁目中央地区 |
280億3587万円 |
82億6346万4千円(27億5950万5千円) |
29% |
小杉3丁目東地区 |
434億5200万円 |
144億2978万2千円(34億497万円) |
33% |
(2)「総合自治会館」の床の買い取り価格は、再開発ビル平均の1.4倍。
続いて、その価格が適正かどうか判断するために、ビル全体から割り出した床の平米単価を求めましたが、まちづくり局長は、「把握していない」と答弁。そこで、改めて、10月4日の総括質疑において、従前の土地・建物の資産総額は、約100億円であることがわかりました。
「総合自治会館」の買い取り価格が適正かどうかを判断する際、その再開発ビル全体の床の平米単価がいくらになるのか、見ることが必要です。
再開発ビルの床面積を検証する際、参考になるのが「ビルの原価」という見方です。「ビルの原価」とは、そのビルを建設するのに事業者がいくら負担したかという金額です。
「ビルの原価」=(再開発の総事業費―補助金額)+敷地の価格+従前の建物の価格
「小杉町3丁目東地区市街地再開発事業」の場合、「ビルの原価」は約390億円となり、これを再開発ビルの共用部分を除いた床面積で割ったビル全体の平米単価は89万2千円です。実際の買い取り価格は、平米単価125万6千円なので、1.4倍もの価格で購入したことになります。他都市の事例でも、再開発ビルに公的施設が整備される事例において、買取価格が再開発ビルの平均の床単価よりも高く設定されている例が多く見られます。これらの差額が、事業者の「利益」になるのです。
テーマ2 鷺沼駅前地区再開発等事業費について
(1)バスターミナルの拡大でバスの路線の充実は本当に変わるのか?
「宮前区のミライづくりプロジェクトニュース」のQ&Aで、「「小田急沿線からバス路線の新設や向丘地区からの増便等利便性の向上するよう、バス事業者と検討する」と回答しているが、具体案について質しました。
まちづくり局地域整備推進室課長の答弁
「小田急線沿線からの路線新設、向丘地区などからの既存路線の増便によるアクセス強化など、地域特性や需要等も踏まえ、バス事業者と連携しながら、駅アクセスの向上に向けた取組を進めてまいります」
「向丘地区では、鷺沼駅へのバス路線の拡充を求める御意見もあるものと認識しており、バス事業者と連携し、鷺沼駅へのアクセス向上に向けた検討を進めてまいります」
市の答弁は、具体性に乏しく、また、「利用実態を踏まえる」「需要も踏まえ」など、採算性を意識した答弁で、「移転」による不便さの解消を約束したものになっていませんでした。「コロナ後の社会の変化」で、人の移動についても変化が生じるといわれ、バス事業も利用者の減少が生じている中でバス便の新設や増便を行うには、市の積極的な支援が必要です。
(2)超高層マンションの地域への影響は見直しで軽減されるのか?
「宮前区のミライづくりプロジェクトニュース」では、「高層マンションは周辺環境への影響(風害・交通渋滞)が心配では?」との問いに「施設計画の検証結果を踏まえ、改めて、関係法令等を踏まえた計画となるよう、協議・調整を行っていきます」とあるが、どのような協議を行っているのか、また、風害や交通渋滞について、市として、当初計画における課題をどのようにとらえているのか質しました。
左の図の●は、風速3の地点。風邪対策を行った後の風速でもランク2になる。ランク2は、住宅地の商店街の環境(ランク1)より、風害の発生率が高くなっている。右の図は、再開発後の交通量の予測。いづれも、環境影響評価から作成したもの。
「(風害、地域交通等の)環境配慮項目に関する予測結果が示され、環境保全措置等を講じることで、計画地周辺の生活環境の保全に支障はないものと評価されておりますが、施設計画の検証結果を踏まえて、改めて、関係法令等を踏まえた計画となるよう指導してまいります」
石川市議は、事業者の行った「環境影響評価」でも、対策後においても「住宅地の商店街の環境としては、ふさわしくない」という、風環境になることが予測されており、「支障ない」との認識は改めるよう求めました。
(3)「市道鷺沼線」の廃止が再開発計画の大前提。1000㎡の公有地が減少。
現在のバスロータリ―と商業施設であるフレルとの間の「市道鷺沼線」を廃止して、そこにタワーマンションを建設するものです。そこで、石川市議は、廃止される「市道鷺沼線」の面積、再開発事業において、どのような経過で、廃止することになったのか、協議内容を質しました。
質疑で市道廃止の考えを示したのは、「2018年8月の基本方針策定に向けた中間報告のまちづくりフォーラムに向けて、準備組合に示した」と、市から持ち掛けたという答弁でした。しかし、この超高層マンション計画は、市道鷺沼線の廃止無くしては成り立たないもので、2017年8月には、再開発準備組合が設立され、再開発の事業計画がすでに進んでいたことが想定されることから、市の説明は納得できるものではありません。引き続き、検証する必要があります。